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ホーム ウェブ連載コラム私の1冊 > 第9回 別所哲也(べっしょ・てつや)

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今ここにあることに満足せず
日々自問自答し、改革していくこと


bessyo_issatu 僕が今一番大切にしている本は、映画出演がきっかけで出会えた辰巳ヨシヒロさんの自伝『劇画暮らし』です。

 辰巳ヨシヒロ先生は「劇画」というジャンルを生み出し、今も漫画作家や世界中の日本アニメ・劇画ファンが崇拝している偉大な漫画家さんです。
 今でこそ漫画は大人も読みますが、かつては子どものものだった漫画を劇画という手法で大人の読み物に成熟させたのも彼。宮崎駿や庵野秀明、押井守など、日本の現代アニメやゲームのストーリーテリングは、辰巳先生から始まってるんです。
 ただ日本では知名度が低く、正直僕も映画『TATSUMI マンガに革命を起こした男』に参加するまでよく知りませんでした。この本には、そんな彼が自ら綴った半生が書かれています。

  歳を重ねると、だんだん感動できることや初めて経験することが少なくなりますが、この本に書かれていた先生の半生には久々にしびれましたね。
 特に、漫画の黎明期に関西から東京へ上京し、試行錯誤を続けながら「劇画」という独自のスタイルを確立されていくまでの、その一連のプロセスは最も印象的。既存のすべてのことに満足しないで常に自問自答し、改革をすることの大切さに、改めて気付かされました。
 粘り強く一つの道を極める彼の実直さは、先日実際に先生にお会いした時にも感じました。物静かながら情熱を秘めた職人気質な方で、その存在感に圧倒されてしまったほどです。
 もう一つすごいと思ったのが、59年初頭に「劇画ブーム」に幻滅した先生が、“社会の底辺”をに着目した作品を発表したこと。きっと先生は人間の弱くてダメなところや、恥ずかしい、悲しい、野蛮な側面など、ダークな部分を受け入れることができる真の大人だったんだと思います。
 だから僕は、自分自身に喝を入れたい時や、大人としての力量をしっかり持ちたいと自分を戒める時にこの本を手に取ります。すると本が優しく微笑みかけてくれますよ。最近会う人みんなにこの本を薦めています。本は想像力と創造力の最高のサプリメントですから。

別所哲也(べっしょ・てつや)

慶應義塾大学法学部卒。90年、日米合作映画『クライシス2050』でハリウッドデビュー後、映画・TV・舞台・ラジオ等で幅広く活躍。ミュージカル「レ・ミゼラブル」をはじめ、大作・話題作の舞台に多数主演。2010年には岩谷時子賞奨励賞を受賞。近年では、NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」や野村證券TVCFなどに出演。99年より、日本発の国際短篇映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル」を主宰。これまでの取り組みから、文化庁長官表彰を受賞し、観光庁「VISIT JAPAN 大使」、内閣官房知的財産戦略本部コンテンツ強化専門調査会委員、カタールフレンド基金親善大使、横浜市専門委員、映画倫理委員会委員に就任。

http://www.t-voice.com/

 

 

 

 

bessyo_movie「1人で6役の声に挑戦したのですが、とてもやりがいがあり野心的な演出でしたね。監督は声色よりも、息遣いとかテンポに特別こだわっていた。キャラクターに声がのると命を持って動き出すんです。これは実写では味わえない感覚なので、監督と僕は大興奮。情熱と共に盛り上がって収録していたのでスタジオに何時間缶詰になってても気がつかなかったくらい(笑)。
声には持ち主の人生のリズムや、メロディーが反映される。だから登場人物の考え方やライフスタイル、過去などを元にそれぞれ構築して、最終的に声に凝縮していった。役作りのプロセスがとても面白かったし、身長186cmの僕が実写ではなかなかやることがない弱々しい役を演じる楽しさもありました。辰巳先生の作品の世界観を壊さないように国際的なチーム編成で“動く劇画”が完成しました。昭和の色、香り、表情、街並み…この作品はまさにフィルムノワールならぬ“劇画ノワール”!世界が認めた辰巳先生の世界を閉じ込めた、ほろ苦い大人の映画をぜひ味わってください」

更新日:2014/11/25

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