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佐藤江梨子(女優)×道尾秀介(作家)対談  「Jam Session」

2004年『背の眼』でデビュー以来、『シャドウ』『龍神の雨』そして、直木賞受賞作『月と蟹』など、数多くの話題作を書き続けている道尾秀介さん。その道尾さんが毎回、自らの作品をテーマにゲストと語り合うこの対談。第2回目のゲストは女優の佐藤江梨子さん。小説もお書きになる佐藤さんとお話し頂く作品は『球体の蛇』。奇しくも本作の構想がまとまった場所「スノードーム博物館」で行なわれた話題豊富な対談を3回にわたってお送りします。

実はここで『球体の蛇』を思いついたんですよ(道尾)

更新日:2013/10/24

佐藤:タイトルを『球体の蛇』にしたのは、『星の王子さま』から採ったんですか? ちょっとお聞きしたかったんですけど、『蛇の卵』(R・A・ラファティ)という小説があるんです。それは読めば読むほど全然わかんなくなっていく本なんですよ。この本も後半でどんどん謎が深まっていくような話なので、もしかするとそれを意識してつけたタイトルなのかな、と思ってんです。

道尾:ああ、その本は読んでないですね。ただ、なんなのか知りたくて本を読むんだけど、読んだらもっとわからなくなった、という話は大好きです。

佐藤:あ、そうですか。

道尾:さっきも言いましたが、まさにその辺が書きたいことでもありますね。『球体の蛇』の蛇がなぜ球体かというと、大きな真ん丸い嘘を丸呑みにして生きているからなんです。もちろん球体の蛇というのは人間のことなんですけど、もう呑み込んじゃってるから外からは中が見えない。その人の腹が膨れて苦しそうなのはわかるけど、何を呑み込んで苦しいのかまではわからない、ということです。そこを書きたかったんですよね。「わからない」という。

佐藤:確かに本のカバーとかもそれっぽくなってますよね。

道尾:あとは、スノードームの印象が大きいですね。今日、たまたま対談の場所としてこのスノードーム美術館をセッティングしてくださったんですけど、実はここで『球体の蛇』を思いついたんですよ。

佐藤:そうなんですか!

道尾:編集者の方はまったく事情を知らずに取ってくれたらしいんですけど。有名な映画で『市民ケーン』(オーソン・ウェルズ監督主演)という作品がありますよね? 僕はあれが好きなんです。スノードームというモノ自体も好きなんで、これをテーマに書いてみたいというのがあったんですね。東京周辺でたくさんスノードームを見られるところって、ここしかないですから、やって来て1、2時間くらい見ていたんです。ここって、まったく物音しないじゃないですか? あそこにいる受付の方も咳払い一つしない(笑)。ちょうど平日の日中だったんですね。ずっと見ていると、外側と内側というのがだんだん、どっちがどっちかわからなくなるようになりました。
(観覧車があるスノードームを指して)この中の、観覧車のそれぞれの箱に乗っている人たちの顔を思い浮かべるじゃないですか。そうすると「あ、そうか。観覧車に乗っている人からすれば、ここが全世界なんだ」と思えるんですね。あとは、まったく同じスノードームを見て、「雪だるまが中に閉じ込められていてかわいそう」と思う人と、「雪景色がきれいだ。こんなところに行きたい」と憧れを感じる人と二種類いるんじゃないかな、ということも思いました。それが出発点で、もう、ここを出るときには、大まかなストーリーが出来てたんですよ。

佐藤:へ~。

道尾:久々に来て懐かしいです。このスノードーム美術館に置いてある中にひとつ、おもしろいのがあるんですよ。ちょっと小太りのおじさんが一人だけ入っていて、スコップを手にボケーっと口を半開きにして空を見ているというだけのものです。それって、雪を降らせたときと、降ってないときとで、おじさんの考えていることが全然違って感じられるんですよ。雪がないときは「今年は降らないなぁ」「暖かくていいなぁ」って考えているように見えるけど、降らせると、彼は雪を見上げることになるんです。そうすると、何かちょっと心配そうな顔に見えてくるというのがおもしろくて。

佐藤:スノードーム自体は、今、あまり一般的なものじゃないですよね。子供のころは、一家に一つ二つは必ずありましたけど。この本を読んだときは「なんでスノードームなんだろう?」って最初思ったんです。でも、読んでいると小道具として、いろいろな使い方があっておもしろかったです。
スノードームって、子供のころ、一回壊してみたいって気持ちになりませんでしたか? 「この中はどうなっているんだろう?」とか、「この水は普通の水なんだろうか?」とか。

道尾:『球体の蛇』で主人公が壁に投げつけるシーンがあるんです。あれ、本当に実験してみたんですよ。壁に投げてみたら、木っ端微塵になっちゃった。
さっきのリアルとリアリティの話に戻りますけど、あの場面でパリーンとキレイに割れたら、やっぱり美しくない。だから、思い通りに粉々に割れてくれなかったことにしたんです。

佐藤:あそこを読んでプラスチックのドームだったのかなぁ、って思っちゃった。

道尾:たぶん、もっとガラスの厚い高級品だったんです(笑)。

作品紹介

佐藤江梨子(女優)×道尾秀介(作家)のプロフィール 佐藤江梨子写真集の購入はこちら 道尾秀介 公式Twitter

スノードーム美術館


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