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ホームウェブ連載コラム佐藤江梨子(女優)×道尾秀介(作家)対談 「Jam Session」第2回 > そうですね、入りすぎてしまうというか、それが楽しいんですよね(佐藤)

佐藤江梨子(女優)×道尾秀介(作家)対談  「Jam Session」

2004年『背の眼』でデビュー以来、『シャドウ』『龍神の雨』そして、直木賞受賞作『月と蟹』など、数多くの話題作を書き続けている道尾秀介さん。その道尾さんが毎回、自らの作品をテーマにゲストと語り合うこの対談。第2回目のゲストは女優の佐藤江梨子さん。小説もお書きになる佐藤さんとお話し頂く作品は『球体の蛇』。奇しくも本作の構想がまとまった場所「スノードーム博物館」で行なわれた話題豊富な対談を3回にわたってお送りします。

そうですね、入りすぎてしまうというか、それが楽しいんですよね(佐藤)

更新日:2013/10/24

佐藤:私、『クローサー』という舞台に出たことがあるんですよ。映画ではナタリー・ポートマンが演じた役が私で、ほかには辺見えみりさんとMAKIDAIさんと福士誠治さん、四人しか出ないお芝居なんです。
私が演じたのは、彼氏が新聞読んでたら目の前でおしっこしちゃうような、ちょっとぶっ飛んでる系の人なんです。ナタリー・ポートマンはその役でゴールデングローブ賞の助演女優賞を獲ったくらいすごい素敵な作品なんですよ。それはいいんですけど、舞台を見た人のアンケートとかに「佐藤さん、素でできるからスゴイ!」とか書いてあって。いや、全然素じゃないんですけどね(笑)。
その役の女性が、「私はサンドイッチは食べるけど、ツナは食べない」って言うんです。なぜかというと「魚は海でおしっこするから」って。「子供もおしっこするでしょ?」って言われて、「子供も食べないし、海でおしっこするものは基本食べない」。

道尾:なるほど。(笑)。

佐藤:だから、その役に入ってたときは、ツナとか魚とか全然食べなかったです。

道尾:それを「素でできる」って言われたというのは、すごい褒め言葉ですよね。だって自然に見えたってことですからね。

佐藤:いやいや(笑)。まぁ、そういっていただいて嬉しかったんですけどね。で、その子がスノードームがすごく好きだったんですよ。

道尾:あ、そうなんですか。

佐藤:そうそう。スノードームをいつもカチャカチャいじってるんです。好きになった人にはいつもスノードームをあげる設定もある。それがすごく印象的でしたね。彼女は寂しくなって浮気しちゃうんですけど、彼氏が「こいつと浮気したんじゃないか」って見当をつけてその人のところに尋ねに行くと、自分が初めてもらったプレゼントとまったく同じスノードームが置いてあるという、悲しいシーンがあるんです。

道尾:小道具の使い方がいいですね。

道尾:さっきの、スノードームの外側と内側という話なんですけど、これも『気遣い喫茶』の、「役があると、脳がやっと役立つの」(「役があると、」)という文章とちょっと似てる気がしたんですよ。これは、その役を仕事で演じると、現実感が出るということですか?

佐藤:そうです。あまり、日ごろは脳みそ使ってないんですよねぇ……。

道尾:そんなことないでしょう(笑)。役を演じるのって、自分の外側に脚本があるわけじゃないですか。で、そっちに行った時に普段よりも脳がいつもより働いて、そっちが内側になっちゃうというのが僕はおもしろかったんです。

佐藤:そうですね、入りすぎてしまうというか、それが楽しいんですよね。最初はそれこそ、役を自分の内に入れる作業をするんですよ。
たとえば目が見えない人の役をやったときには、関連のNPO団体に行ったり、そういう学校も見たり、本を読んだり、点字を勉強したり、白い杖で歩いてみたり、とにかくいろいろやってみるんですけど、だんだん中に入ってくると、それが日常になるんですね。そうなると、「あ! やっと中に入ってくれた」と思うんです。困るのは、私は一回入っちゃうと出てくのも遅いんですけどね(笑)。

道尾:木下龍也さんていう歌人の方、知ってます? まだ若い方なんですけど、『つむじ風、ここにあります』という歌集があるんです。すごいおもしろいんですけど、その中に今佐藤さんが言われたのと似た状況の短歌があるんですよ。
「カードキー忘れて水を買いに出て僕は世界に閉じ込められる」というんですけど、部屋から出て、世界に閉じ込められる。外側が内側になってしまうんですよ。部屋が外側になってしまう。こう、中と外が一瞬で、この句を読むことで、入れ替わるという。
僕は『球体の蛇』を書くときに、スノードームの中にある役に入らなきゃ、と思って努力しているうちに、いつの間にかドームのほうが現実になっていて、役の中に入ってしまった自分は現実にいたころを懐かしんでいる、みたいな状態になっちゃったんですね。それをよく覚えています。

作品紹介

佐藤江梨子(女優)×道尾秀介(作家)のプロフィール 佐藤江梨子写真集の購入はこちら 道尾秀介 公式Twitter

スノードーム美術館


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