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谷原章介(俳優)×道尾秀介(作家)対談  「Jam Session」

2004 年『背の眼』でデビュー以来、『シャドウ』『龍神の雨』そして、直木賞受賞作『月と蟹』など、数多くの話題作を書き続けている道尾秀介さん。その道尾さんが毎回、自らの作品をテーマにゲストと語り合うこの対談。第1回目のゲストは俳優の谷原章介さん。読書家としても知られる谷原さんと語って頂く作品は2012年の作品『ノエル』。物語とは何か、演じるとはどういうことか、そして、意外な共通の趣味まで─話題豊富の対談を全3回でお送りします。

映画は彫刻、連続ドラマは粘土細工(谷原)

更新日:2013/7/31

道尾:ドラマなどの撮影の際にコマ撮りということをされますよね。それを撮っているときに、前のカットで何が起きたか、後で何が起きるかわからない、ということもあるんですか?

谷原:たまに時間がないときに、台本も上がってこない段階で、ここだけは予告を撮らないといけないようなことがあって、例えば8話の第何シーンだけとか、前後がわからないままに撮っていたりもしますね。道尾さんがおっしゃった長篇と短篇の違いというか、映画だと脚本が全部上がっているので全て自分の中で組み立てて要らない部分は捨てていけるんですね、彫刻みたいに。でもドラマの場合は、基本は最初の一話、二話くらいがあって進みながら、こんな話になっていくのか、と徐々にわかっていく感じです。

道尾:あ、なるほど。

谷原:ドラマって不思議なもので、放送していくうちに、各方面のリアクションを作り手側が無意識のうちに受け止めて、徐々に変わっていったりするんですよ。だから、連続ドラマはやっぱり塑像のように、粘土細工のように作り変えていく感じです。映画のときみたいに部分を捨ててしまうと、その中に必要な物があったりするんで、もっと茫漠とした感じで役作りをすすめていきます。僕らは基本的にストーリーを用意してもらっているので、全体を見るよりはミクロの視点からドラマを捉え直したりしますね。

道尾:役作りのときには、むしろ自分の役しか理解しない方がいいということなんでしょうか?

谷原:他のキャラクターも一応理解はします。でも自分の役については、責任を取るということでしょうね。もちろん役作りは一人でするものではなくて相手役とのやりとりで出来ていく部分もありますが、自分の責任についてはクリアにしておきたいという感じです。

道尾:僕は長篇を書いているときや、短篇を連作につなげているときに、子供が粘土をいじっているのと変わらないなあと思うことがあるんです。谷原さんがされた塑像の話と、すごく似ていると感じます。「役作り」ということで言えば、小説ではいくら主人公がいても、その人物の視点だけに責任を持つわけにもいかないんですよね。基本的には主人公の視点と一体化しながら、ときおりザッピングのような感覚で他の視点に切り替えて、またメインのカメラにもどってくるような感じで書きます。もちろん一人称の小説でも同じです。

谷原:『ノエル』で言うと、圭介の先生だった与沢が元住んでいた家に、意外な人物が越してきたことが後からわかりますよね。そういう展開は与沢が主人公の回を書くために最初から作っていたわけじゃないんですか。

道尾:小説って、紙が文字でびっしり埋まってるわけですけど、じつは書かれていないことのほうが圧倒的に多いんですよ。ですから、後から余白を利用しようと思えば何でもできるんです。
 ただ、自分の小説を読み返して「あまりに作り物めいている」と思ったときは、その原稿は捨てますね。現実の世の中にだって、そんな偶然があるものか、みたいな出来事は確かにいくらでも起きますが、小説の場合、書き方によっては本当に作り物っぽく見えてしまいます。そのさじ加減はいまだにわからないんですよね。だからいまでも原稿をたくさん捨てます。比喩ひとつとっても、いかにも「ひねり出しました」みたいなのは後の推敲でみんな消えていく運命です。

谷原:難しいですね。韓国のドラマって日本のものよりすごく劇的に作られていると思うんです。それがぐっと人の心をつかむこともある。逆に、日本のドラマは緻密にリアリティを重視して創りあげていくことが多いんですけど、その中ではちょっとしたことがすごくあざとく見えてしまう場合もあったりします。

道尾:全体の中で違和感があるかどうかの問題かもしれませんね。僕の場合、全体のイメージを構成するのは文体なんですけど、その文体と情景描写などがマッチしていないと、そこが目立ってしまうんだと思います。

作品紹介

谷原章介(俳優)×道尾秀介(作家)のプロフィール


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