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ホームウェブ連載コラム谷原章介(俳優)×道尾秀介(作家)対談 「Jam Session」第2回 > 僕はいつも小説で「救い」を書きたいと思っているので(道尾)

谷原章介(俳優)×道尾秀介(作家)対談  「Jam Session」

2004 年『背の眼』でデビュー以来、『シャドウ』『龍神の雨』そして、直木賞受賞作『月と蟹』など、数多くの話題作を書き続けている道尾秀介さん。その道尾さんが毎回、自らの作品をテーマにゲストと語り合うこの対談。第1回目のゲストは俳優の谷原章介さん。読書家としても知られる谷原さんと語って頂く作品は2012年の作品『ノエル』。物語とは何か、演じるとはどういうことか、そして、意外な共通の趣味まで─話題豊富の対談を全3回でお送りします。

僕はいつも小説で「救い」を書きたいと思っているので(道尾)

更新日:2013/8/7

谷原:人間はなぜ物語を必要とするんでしょうね。これは素朴な疑問なのですが。

道尾:僕も、人類初の作家は誰だったのかなって考えることがあります。原始の人間が、何かの現象と何かの現象とを、心の中で結びつけたのが始まりだと思うんですね。例えば、なんとなく手をたたいた瞬間に夜空で星が流れて、その二つの出来事を単なる偶然としてとらえず、心の中で関連づけたり。あるいは小さな星と星をつないで、何かのかたちを思い浮かべるだけでも、一つの物語ですよね。

谷原:もしかしたら人間って、現実だけじゃ生きていけないんですかね。

道尾:そうだと思います。ほとんどの人は片目をつぶって生きていて、片方のまぶたの裏にいつも物語を描いているんじゃないでしょうか。そんな中で、ときおり両目をつぶってしまう人も出てくるんだと思います。

谷原:僕はお芝居で生きているんですけど、農家のように生活に役立つものを作っているわけではない。世相が例えば戦時中のように切迫した状況になると演劇のようなエンターテイメントってまっさきに削られるものでしょう。逆にそういう時代だからこそ僕はストーリーというものが必要だと思いますが。
 ただ、おなかがいくらいっぱいになってもお金がいくらあっても、心の栄養みたいなものが枯渇してしまうと、ただ人は飯を食って排泄をするだけの生き物になってしまう。心が元気に活き活きとしているためには、なんらかの物語が必要なんだと思います。僕らの俳優という職業は、観終わった人が何か元気になるとか、明日からがんばろうって思ってもらえる気持ちみたいなものを作っているのかな、なんて思うこともありますね。

道尾:ちょっと語弊がありますけど、僕は「読者のため」という気持ちでは書いてないんです。狙い定めてショーマンシップを発揮すると、小説はたしかに売れるんですけど、つまらなくなってしまう。そういった最大公約数を狙ったものを作りたくないというのがあって、僕自身が読んだときの気持ちよさのためだけに書く、ということを続けているんです。
 だけど、読んだ人から救われたという一言をいただいたときは別で、それは心から嬉しいです。僕はいつも小説で「救い」を書きたいと思っているので。
  でも「救い」を書くのって、すごく難しいですよね。小説は、どんなにひどい状況になっても、次の一行で何とでもできる。ものの数秒で世界全体を救うことができます。でも、そういう安易なやり方だと、読んでいる人を救うことは絶対にできないんですよね。

谷原:『ノエル』に書かれているエピソードは、自分の足で光に近づくというのが素敵ですよね。

道尾:童話がテーマということもあって、書きながら「マッチ売りの少女」を思っていました。あれは俯瞰してみると単に「お金のない女の子が街角で死んでしまいました」という話ですが、登場人物に寄り添ってみれば間違いなく救いを描いた作品ですから。

作品紹介

谷原章介(俳優)×道尾秀介(作家)のプロフィール


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