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ホームウェブ連載コラム谷原章介(俳優)×道尾秀介(作家)対談 「Jam Session」第3回 > 続けることだけを目標にはしたくないし、やるからには初心の感動みたいなものは忘れずにいきたいですね(谷原)

谷原章介(俳優)×道尾秀介(作家)対談  「Jam Session」

2004 年『背の眼』でデビュー以来、『シャドウ』『龍神の雨』そして、直木賞受賞作『月と蟹』など、数多くの話題作を書き続けている道尾秀介さん。その道尾さんが毎回、自らの作品をテーマにゲストと語り合うこの対談。第1回目のゲストは俳優の谷原章介さん。読書家としても知られる谷原さんと語って頂く作品は2012年の作品『ノエル』。物語とは何か、演じるとはどういうことか、そして、意外な共通の趣味まで─話題豊富の対談を全3回でお送りします。

続けることだけを目標にはしたくないし、やるからには初心の感動みたいなものは忘れずにいきたいですね(谷原)

更新日:2013/8/20

――道尾さんは、合わない小説は読むのを止めちゃう派ですか?

道尾:最近は自由な時間が少なくなっているので、止めちゃう事が多いですね。作家をやっていると、作品にこめられた魂の総量が高いか低いかがなんとなく判ってしまうことがあるんです。合う合わないよりも、著者の愛が感じられない小説に対して、続きを読みたい気持ちがなくなっちゃいますね。

谷原:何度も読み返す本というのはありますか?

道尾:同じ小説を二回読んだことはないんです。書評や文庫解説を依頼されたときは別ですけど。同じものを読み返す時間と労力で、もう一冊新しいものを読みたい、という気持ちのほうが強いですね。

谷原:人生のうちにそんなに読めないですものね。僕も実は読み返す本というのはあまり無いので、道尾さんにそういう一冊があったら読んでみたいなと思ったんです。何か一冊お薦めしていただけませんか?

道尾:最近フォト・エッセイをよく読むんです。鬼海弘雄(※15)さんという写真家の方がいらして、ものすごい名文家なんですよね。『PERSONA』という土門拳賞を獲った写真集があって、その普及版の『ぺるそな』にはエッセイがたくさん追加されているので、本当にお薦めです。

谷原:買ってみます!

――そろそろお時間なのですが、道尾さんから最後にお聞きしたいことはありますか?

道尾:今のお仕事を、死ぬまでずっと続けていかれたいですか?

谷原:半分YESで半分NOですね。役者をしている自分に飽きる瞬間はきっとあると思うんです。僕は芝居をしているということを職人的にとらえている部分があって、お金を貰う以上はプロとしてのクオリティを維持したいという気持ちがあります。
わかりやすいことばかりはしたくないけど、マニアックな方向に寄りすぎるのも違う。そのバランスをとりながらやっていて、仕事として捉えているから続けられてるというのは間違いないと思うんです。ただ、それに縛られすぎると与えられたものをこなす作業になってしまいそうで、自分自身に感動がなくなっていく気がするんですね。ですから、続けることだけを目標にはしたくないし、やるからには初心の感動みたいなものは忘れずにいきたいですね。
芝居をしていると「今だよね。今のがやりたかったことだよね」という感覚が、全員に共通して降りて来ることがあるんです。ただ、映像だったら一回撮れればそれでいいんだけど、舞台だったらたまたま昨日みんなでつかまえたものが、次の日に同じことをやってもただなぞった芝居になって魂がこもらなかったりするんです。毎回自然な気持ちで、自分を追い込むのは結構疲れます。そのモチベーションをどこまで保てるのか、ということでしょうね。

道尾:僕も同じです。来月刊行される『鏡の花』を含めると、今22冊著作があるんですが、さすがにもう「小説の書き方」ってわかってるんですよ。ですから、同じレベルのものを量産しようと思えばできるんです。ただ今は、一行書くごとに「今までより成長しているか」「これまでやれなかった事ができているか」を考えながら仕事をしていて、それをやらなくなったら絶対に飽きてしまう。なんというか、他の商品と小説を一緒にしてしまうかな、と。
小説は他の商品と違って、たくさんの人に読んでもらうことを目的にして書かれるわけじゃないですから。そうならないように、今のこの気持をずっと維持して書いていきたいなと思います。それができなくなったら書いてもしょうがないですし、きっと書けなくなるでしょうね。今はちょうど、子供のころの恋愛みたいな感じなんです。無目的というか、邪な目的が何もない(笑)。その状態を維持できているので、できればこのままいきたいです。大人の恋愛みたいに、打算でいっぱいになったり、取引みたいにならないように。

谷原:胸に沁みます。日々気をつけたいですね。

司会・構成/杉江松恋  撮影/干川 修

※15 鬼海弘雄:写真家。1945年山形生まれ。2004年『PERSONA』で土門拳賞受賞。

作品紹介

谷原章介(俳優)×道尾秀介(作家)のプロフィール


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