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いままでに
経験したことのないチャレンジ

――前回から続く。

 いったいどうしたら、そうした思考力・行動力・教養を備えたT字型人間になることができるのでしょうか? 
 そこでカギとなるのが、幼少時代の自然体験、そして多様なものに興味を持つ習慣だといわれています。
 たとえば、私の恩師である解剖学者・養老孟司さんがその好例といえるのではないかと思います。養老さんは子どもの頃からとても勉強ができたそうですが、ただ勉強だけやっていたわけではありませんでした。というより、それをはるかに超えたレベルで昆虫採集に夢中だったということです。
 生まれ故郷の鎌倉の野山を歩きまわり、大好きなゾウムシなどを捕まえ愛めでながら、生き物の不思議さについて思いを馳せた経験が、解剖学という養老さんの研究テーマの揺るぎない基礎となったことは想像に難くありません。
 では、子ども時代にそのように豊かな感性や教養を育てていなかった人は、T字型人間にもなれないし、大きな結果は残せないのでしょうか? いいえ、多様性というのは大人になってからでも十分育むことは可能です。
 たとえば休日に、いままでに経験のないチャレンジをしてみることは効果があるでしょう。仕事の技術を向上させるために、ただただ休日返上で業務にあたるという考え方を変えて、ダイビングで海の探検にチャレンジしたり、また行き先を決めずに電車に乗ってみることなどはいかがでしょうか。
 脳はいままでに経験のないサプライズに出合った時、活発な活動を始めます。そうして脳に心地よい負荷がかかることで、思考力や発想力、そして「やり抜く脳」の回路も強化されていくのです。
 私自身についてもこれはまったく一緒で、T字の横棒を広げるためのチャレンジは常に欠かしません。普段から脳科学者として人間の意識の問題やクオリアなどに向き合っているわけですが、脳科学だけに埋没しているだけでは研究の幅も広がっていかないでしょう。
 そのため、テレビやラジオの仕事、講演会、イベントの仕事、そしてこのような本を執筆する仕事……。これらを通じて思考の多様性が育まれ、脳科学者としての成長につながっているのだと実感できています。
 皆さんもこのように、あるひとつの分野でオタクになり、だれにも負けないくらいの強みを持ち、それと同時に、さまざまな分野の考え方や知識を持ったT字型人間を目指してみませんか? 
 こうして脳の“筋力”を強化することで、何をしても続かない三日坊主を卒業し、どんなことでも粘り強く実現させる「やり抜く脳」の基礎体力がつくられていくはずです。

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更新日:2017/6/29

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プロフィール

茂木健一郎 (もぎ けんいちろう)

1962年東京生まれ。
東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。
理学博士。脳科学者。
理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職はソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。
専門は脳科学、認知科学であり、「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに、文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。
2005年、『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞を受賞。
2009年、『今、ここからすべての場所へ』(筑摩書房)で第12回桑原武夫学芸賞を受賞。
主な著書として、『結果を出せる人になる!「 すぐやる脳」のつくり方』『もっと結果を出せる人になる! 「ポジティブ脳」のつかい方』(ともに学研プラス)、『人工知能に負けない脳』(日本実業出版社)、『金持ち脳と貧乏脳』(総合法令出版)などがある。

作品紹介

IQも才能もぶっとばせ!やり抜く脳の鍛え方


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