日本の先行きはこれからどうなるのか
ピケティは『21世紀の資本』において、日本についてはそれほど言及していません。しかしながら、「はじめに」でも述べたように、2015年1月末にピケティが来日したこともあり、これからの日本に対するピケティ本人の見解が、新聞や雑誌のインタビュー記事として掲載されました。
その中でピケティが繰り返し唱えていたのが、民間資本の増加と資本に対する増税です。
いまや日本政府の債務残高はGDP(国内総生産)の2倍以上に膨らみました。しかしながら公的資本が減少する一方で、民間資本は増加して、その富はいまや国の借金と等しいとピケティは指摘します(2015年1月1日「朝日新聞」)。
一方、「r>g」の社会では労働所得は停滞し、資本や資本所得の優位性が高まることはすでに見た通りです。
それならば労働所得に対して減税をし、資本に対して増税するのが自然な解決策だろう、とピケティは指摘しています(2015年1月31日「週刊東洋経済」)。
また、債務残高を減らす方法の一つにインフレーションがあります。これは、両大戦後に戦争参加国が故意にインフレを作り出しました。インフレになるとお金の価値が下がるため、借金が実質的に帳消しになるからです。しかしハイパーインフレはささやかに暮らす人々に犠牲を強います。ちなみに程度の差は大いにありますが、金融政策に頼るアベノミクスの路線もこの方向と軌を一にするように見えます。
また、インフレの創出がかなり大胆な債務残高の削減策であるのに対して、増税や歳出抑制はよりオーソドックスな手法です。ただし、過去にGDP比200%を経験したイギリスでは、1世紀に及ぶ歳出抑制で教育への投資が減少しました(同「週刊東洋経済」)。
日本が同じ轍を踏むのは避けなければならない、とピケティは言います。
更新日:2015/4/29