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その頑張りは
エネルギーのムダづかいかも…

 そしてまた、多くの人が誤解していることのひとつに、「ポジティブ思考には正解がある」と思ってしまっていることが挙げられます。
 さらに「ポジティブ思考の習慣を持っている人が人格的に優れている」という考えも同様で、多くの人が「私はポジティブ思考ができないからダメなんだ」と自分を責めて、無理をしてしまっています。
 無理しているということを本人もわかっていて、まわりの人もわかっている。でも止められない。苦しまぎれに「頑張ってるね~」と声をかけてはみるものの、その本当の意味は「無理してるね~」ということと同じ……。
 こんな痛ましい状況は、なんとかして好転させたいものです。
 
 今、世間では「サスティナブル」という言葉が流行しているようです。
 石油に代わって電気を起こす「太陽光」や「風力」などが「サスティナブル・エネルギー」と呼ばれるように、「持続可能な」「マイナスのエネルギーを残さない」という意味を含めてつかわれていることが多いようです。
 私はこの言葉を、これからの社会において重要視される、とても大切な価値観だと思います。ポジティブ思考もこれと同様に、持続可能でクリーンという、サスティナブルなものであるべきではないでしょうか。
 実際のところ、無理をして頑張っている人は、頑張るほどにそのエネルギーを消耗させてしまうため、残念ながら、そのポジティブ思考を持続させることは不可能といえるでしょう。
 今までネガティブだった人が急に元気にふるまってみても、「脳と心の基礎体力」がありませんからダウンするのは当然。まさに時期尚早というものです。
「私、頑張っているんです!」と宣言してみたものの、半年ぐらい経つとまた元に戻ってしまう……。これではまさに、ポジティブ脳がエネルギー切れした「ポジティブの三日坊主」で、残念としかいいようがありません。

更新日:2016/5/23

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プロフィール

茂木健一郎 (もぎ けんいちろう)

1962年東京生まれ。理学博士。脳科学者。
東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職はソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。専門は脳科学、認知科学であり、「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに、文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。
2005年、『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞を受賞。2009年、『今、ここからすべての場所へ』(筑摩書房)で第12回桑原武夫学芸賞を受賞。
主な著書に『脳とクオリア』(日本経済新聞出版社)、『ひらめき脳』(新潮社)、『脳を活かす勉強法』(PHP 研究所)、『金持ち脳と貧乏脳』『男脳と女脳』(ともに総合法令出版)、『この法則でゾーンに入れる! —集中「脳」のつくり方』(朝日出版社)などがある。

 

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