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ベストセレクション

何かをやり抜くのに、
IQや才能は関係ない!?

「成功に必要なのは努力か、それとも才能か?」
「一流と二流を分ける能力とは、いったい何なのか?」
 これは、長年にわたりビジネスの世界だけでなく、教育現場でもたびたび議論されてきた問いです。
 先頃こうした疑問に対し、アメリカの心理学者アンジェラ・リー・ダックワースが、世界最高峰のプレゼンテーションイベント、TEDカンファレンスで新たな研究成果を発表したことが世間で大きな話題となりました。
 それは、「グリット」という考え方です。
 グリットとは、物事に対する尽きることのない情熱を表す言葉です。何かの目的を達成するためにとてつもなく長い時間、継続的に粘り強く努力することによって、物事を最後までやり遂げる力、それをグリットと表現したのです。
 冒頭の問いに対して、ダックワースはその研究結果をもとに、生まれ持ったIQや才能はこのグリットに直接は関係していないと述べています。
 このグリットについて要約すれば、次のようになるでしょう。
 誰もが生まれながらの素晴らしい才能や知能を持っているわけではない。そして同時に、豊かな才能や知能を持ったすべての人が十分な成功を収めているわけではない。
 なぜなら、成功で最も大切なものは才能や知能それ自体ではなく、目標の実現に向けた長期的、かつ継続的な努力、つまりはグリットなのだ―。
 このような事実が科学的に証明され、いま世界的にこのグリットが注目を集めているわけです。世の中で素晴らしい成功を収めている人たちが、必ずしも生まれながらの才能や知能に恵まれていたわけではなかったという事実は、私たちに勇気と希望を与えてくれます。
「目標に向かって粘り強く努力を続ければ、IQや才能が飛び抜けていなくても成功は可能なんだ!」
 
 まずは、こうして前向きな考えを持つことで「やり抜く脳」が育まれていくことを胸に刻んでください。

「海外の研究成果とか力説されてもピンと来ないよ! 日本でコツコツやってる自分には、なんだか遠すぎて別世界の話だね……」
 そんなふうに思われる方も、いらっしゃるかもしれませんね。
 ではここで、「やり抜く脳」を鍛えた結果、大きな結果を生み出した二人の日本人アスリートをご紹介したいと思います。
 まず一人目は、元女子マラソン選手の有森裕子さん。
 有森さんといえば、バルセロナ、アトランタオリンピックと二大会連続でメダルを獲得したマラソン界の成功者です。
 そんな有森さんに私がお話を伺って非常に驚いたのは、高校でも大学でも監督からは決して素質に恵まれた選手だと思われていなかったということでした。
 そしてさらに驚いたことに、高校に入学して陸上部に入部を希望したものの、陸上部の監督は、ランナーとして素人同然だった有森さんの入部すら認めてくれなかったというのです。
 しかし、それでもあきらめられなかった有森さんは、監督に入部が許されるまで粘り強く自分をアピールし続け、一カ月後にようやく入部が許可されました。
 ただ、高校では特段目立った記録を出すことができませんでした。大学に進んでからもそれは変わらず、大学を卒業してからの進路も、実業団であるリクルートに、なかば押し掛けのような形で自分から連絡を取り続け、その熱意を小出義雄監督に認められ、最初は「マネージャー兼選手」という形でようやく陸上部に入部を認められたのです。ここまでの悪戦苦闘を経ることによって、有森さんは冒頭で紹介した栄光を手にされたというわけです。

 そして二人目が、元男子プロテニス選手の松岡修造さん。
 現役時代は世界のテニス界でも目覚ましい活躍を披露し、当時の日本人最高ランクである46位まで到達し、四大大会でも輝かしい成績を残してきました。
 そんな松岡さんもまた、テニスを始めたジュニアの頃に、自分の恵まれない体格と身体能力に悩んだそうです。
 身長も低く、丸々と太った体型……。その姿に後年の名選手のきざしはなかったそうです。しかし、そうして才能のなさを指摘されながらも、松岡さんはあきらめることなくテニスクラブで指導を受け、貪欲にテニスを学びました。
 またさらに、松岡さんは“小学校から慶應一筋”という穏やかな環境で育ってきた甘さが自分の成長を阻害していると考え、自分自身を鍛え直すため、自ら志願して九州のテニス強豪校に転校しました。
 あえて自分を甘えがきかない厳しい環境に置き、粘り強く努力をし続けた結果、徐々に頭角を現していったということです。
 このように、有森さんや松岡さんなどの名選手でさえも、生まれ持った才能を頼りにして成功を勝ち取ったわけではないのです。
 自分の設定したゴールに向かい、何があってもあきらめず、徹底的に戦い続ける。
 この能力こそが「やり抜く脳」ということです。

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(※この連載は、毎週木曜日・全8回掲載予定です。2回目の次回は5月18日掲載予定です。)

更新日:2017/5/11

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プロフィール

茂木健一郎 (もぎ けんいちろう)

1962年東京生まれ。
東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。
理学博士。脳科学者。
理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職はソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。
専門は脳科学、認知科学であり、「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに、文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。
2005年、『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞を受賞。
2009年、『今、ここからすべての場所へ』(筑摩書房)で第12回桑原武夫学芸賞を受賞。
主な著書として、『結果を出せる人になる!「 すぐやる脳」のつくり方』『もっと結果を出せる人になる! 「ポジティブ脳」のつかい方』(ともに学研プラス)、『人工知能に負けない脳』(日本実業出版社)、『金持ち脳と貧乏脳』(総合法令出版)などがある。

作品紹介

IQも才能もぶっとばせ!やり抜く脳の鍛え方


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