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【6】他人任せをやめると、
自分も周りも変わっていく

「いい人」をやめるというのは、たとえば上司の言うことなどに常に逆らえということではありません。

「いい人」をやめるというのは、さまざまなことを他人任せにするのではなく、自分で判断して行動するということです。

自分で判断して行動するとは、当たり前のことのように思えますが、脳科学的な立場から見ても極めて重要な行為だといえます。

なぜなら、自分にとって優先順位の高い選択肢を選び取り、それをコントロールできることに脳は大きな喜びを感じるからです。

たとえば、帰り際に上司から、急な仕事を頼まれてしまったとしましょう。

「すみません。私はこのあと大切な用事があるので失礼させていただきます」

その大切な用事というものが、あなたの人生をトータルで考えたとき、上司からの頼まれごとよりも優先すべきものであれば、こんな返答もやむを得ません。そして、それをしっかりと表明することはきわめて重要なことです。

その一方で、もしその大事な用よりも、上司からの頼まれごとのほうを優先することが、あなたにとって必要なことだと判断すれば、頼まれごとに応じるよう返答することが正しいわけです。

要するに、他人でなく自分自身で決断し、その決断をコントロールし続けることが脳にとって重要なのです

 

こうした「何を優先すべきか」という葛藤は、私たちの生活で常に起こり得ることではないでしょうか。

私自身も昨年、「日本のお笑いはオワコン(時代遅れ)だ」と発言し、日本のお笑いやテレビ業界を批判して、賛否両論を巻き起こしました。

そのことで一部のお笑い芸人の方たちと気まずくなったのは事実ですが、すべては自分の責任で、自分にとって優先すべき課題を考えての発言でした。

誰に批判されようとも、ネット上で炎上しようとも、私は私の発言を他者に気兼ねすることなく自分自身で選択したのです。

「何を偉そうなことを言ってるんだ!」と思う人も、「いまの日本のお笑いやテレビ業界はこういうところが足りない、確かに、もっと進化できるよね!」と思う人もいらっしゃるでしょう。

でも、何が正解で、何が間違っているのかなど、誰にもわからないことです。

こうした私の言動を見ていた「いい人」たちの中には、「たとえ本当に思っていてもそんな発言をすべきではない」「黙っていたほうが波風を立てずに済んだのに」などと思われた方もいるかもしれません。

でも、これは私が主張すべきと考え、自分の責任で選び取った選択なのです。

 

世の中には、ありとあらゆる考え方や意見が存在します。

わかりやすい好例が、急速に発展している人工知能問題でしょう。

オックスフォード大学で人工知能の研究を行っているマイケル・A・オズボーン准教授の論文によれば、これからさらに人工知能が発展することでさまざまな職業がITやロボットなどに取って代わられようとしていると言及しているため、危機感を持っている人も多いかもしれません。

けれどもその一方で、人工知能の研究が発展することで、私たち人間の暮らしを、そして社会をより便利で豊かにしてくれる側面があるのも確かです。

私の意見としては、人工知能のほうが優れている仕事は人工知能に任せ、私たち人間は人工知能より優れた部分を生かした働き方や生き方を目指していけばいいと考えています。

ここで最も重要なのは、あらゆる問題に直面したときに、世間の物差しや他人の意見に同調するのではなく、勇気を出して「自分はこう考えている」と自己主張してみることです

これこそが「いい人」をやめるということでもあるのです。

いい意味でも悪い意味でも、他人任せでない自分の考え方をしっかり持つことで、何かの議論が始まったり、体制が動きだすことがあるものです。

さらにいえば、あなたの意見や考え方に賛同してくれる強力な助っ人だって現れるかもしれません。

こうしたちょっとの勇気を出して「いい人」をやめることが、自分ばかりでなく社会を変える原動力にもなるのです。

更新日:2018/12/24

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プロフィール

茂木健一郎 (もぎ けんいちろう)

1962年東京生まれ。
東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。
理学博士。脳科学者。
理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職はソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。
専門は脳科学、認知科学であり、「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに、文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。
2005年、『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞を受賞。
2009年、『今、ここからすべての場所へ』(筑摩書房)で第12回桑原武夫学芸賞を受賞。
主な著書として、『結果を出せる人になる!「 すぐやる脳」のつくり方』『もっと結果を出せる人になる! 「ポジティブ脳」のつかい方』『IQも才能もぶっとばせ!やり抜く脳の鍛え方』(学研プラス)、『人工知能に負けない脳』(日本実業出版社)、『金持ち脳と貧乏脳』(総合法令出版)などがある。

作品紹介

「いい人」をやめる脳の習慣


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