ピケティが提案する二つの税制
経済格差の拡大は、フローとしての所得格差、それにストックとしての資産格差がその原因になります。そして、相続財産の格差と能力主義が組み合わさって、「富める者」が6分の1、「貧しき者」が6分の5という「どこにでもある格差」が生み出されます。
ピケティは、能力による所得格差と相続財産の格差は、「最悪な二つの世界の合体」と述べました。ですから、フローとしての所得格差、ストックとしての資産格差、その双方を抑制する手を打つべきだとピケティは考えます。
まず前者のフローとしての所得格差に対してピケティは、累進的な所得課税を提案します。かつて世界の先進諸国では90%という驚くべき税率の累進所得税が現実に存在しました。ピケティは同様の政策を実行すべきだと、まず主張します。
累進制による所得課税は程度の差こそあれ現在の日本やアメリカでも行われています。 ですからピケティの主張にそれほど驚きを感じないかもしれません。ピケティの主張でより画期的なのは、ストックとしての資本に対する課税です。ピケティはこれを「世界的な資本税」と呼びます。
要するに世界中のあらゆる資産に対して、年次の、累進的な課税を行おう、という考え方です。
面白いのは、ピケティが提唱するこれらの税が、国家の税収を高めることが主目的ではない、という点です。そうではなくて、資本主義が根本的に持つ「r>g」による経済格差を抑制して平等な社会を作るための税制として利用すべきだ、というのがピケティの主張です。いわばより良い公共社会を築くための措置です。
更新日:2015/4/22