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山上憶良『貧窮問答歌』が心を打つのは、
そこに噓がないから。

 『貧窮問答歌』は奈良時代、貧しくて飢え死にしていく農民と、過酷な税を取り立てる役人の様子を、山上憶良が赤裸々に問答形式で歌ったものだ。
 五七調で綴られており、問いに対する答えが、これまた地獄絵図のような光景を読む者に鮮明に想像させる。
 この作品が書かれてから、千数百年の時を超えても、人の感情の本質は変わらないということがひしひしと伝わってくる。
 これぞ、時代を超えたコミュニケーションではないだろうか。
 ところで山上憶良は、遣唐使として唐に渡ったメンバーの一員であり、帰国後は役人として皇太子の教育係を担当したほどのエリートだ。
『貧窮問答歌』の作者である彼自身が、税金で飯を食べている生粋の役人だ。
 そんな男に庶民の気持ちがわかるはずがない、という意見はもっともだが、反対に役人だからこそ、客観的に庶民のありのままの生活ぶりを描写することができたとも考えられるのではないか。
 彼は暇さえあれば自分の足で村を訪れ、庶民の生活ぶりを自分の目で直に見ながら、彼らと本気で対話し続けたのだ。
 憶良自らが1次情報を獲得したことで、当事者でなければわからない背景描写や登場人物の心情が見事に表現されている。
 きっと彼は、エリートである上に、誠実で温かみのある男だったのだろう。
 つまり、エリート集団の中ではかなり浮いた存在であったと思われ、いつも弱者の視点を忘れることのない変わり者に違いなかった。
 それもそのはず、彼は遣唐使時代に仏教や儒教を熱心に学んでいたため、貧富の差や人の生死についてとても敏感になっていたはずだからだ。
 本気で人を動かしたければ、古今東西を問わず、真心からの噓偽りのない対話が大切なのだ。

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(※この連載は、毎週月曜日・全8回掲載予定です。7回目の次回は7月31日掲載予定です。)

更新日:2017/7/24

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プロフィール

千田 琢哉 (せんだ たくや)

文筆家。
愛知県犬山市生まれ、岐阜県各務原市育ち。
東北大学教育学部教育学科卒。
日系損害保険会社本部、大手経営コンサルティング会社勤務を経て独立。
コンサルティング会社では、多くの業種業界における大型プロジェクトのリーダーとして戦略策定からその実行支援に至るまで陣頭指揮を執る。
のべ3,300人のエグゼクティブと10,000人を超えるビジネスパーソンたちとの対話によって 得た事実とそこで培った知恵を活かし、 “タブーへの挑戦で、次代を創る”をミッションとして執筆活動を行っている。

■E-mail
info@senda-takuya.com

■ホームページ
http://www.senda-takuya.com/

作品紹介

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