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第1回 内気な人は、「静かな力」を持っている

「どうしてそんなに静かにしているの?」

わたしは子どもの頃、友だちや先生や知り合いだけでなく、ほんの顔見知り程度の人からも、ときどきこんなふうに聞かれました。文句を言われたわけではありません。みんな、大丈夫かな、なにかあったのかな、と心配して聞いてきただけなのです。でも、中には、ずっと黙りこんでるなんてちょっとおかしい、と思っている人もいたようです。

その質問にはっきり答えられないときもありました。静かにしている理由はそのときによって違うからです。考えごとをしているときもあれば、自分が話すより相手の話を聞いていたいと思っているときもあります。ただ、はっきりした理由がひとつだけあります。それは、わたしはもともと静かな人間だということ。

学校では「友だちが多いね」「活発だね」というのが、いつも一番の褒め言葉。そうではなかったわたしは、授業中、先生からは「もっと発言しなさい」としょっちゅう言われたものです。

学校でダンスパーティーが開かれると、友だちと一緒にダンスフロアに出ていきはしましたが、もし許されるなら、誰かの家に集まって遊んでいたいなあと思っていました。大学では、人が多くて騒々しいパーティーに何度も参加しましたが、心の中ではずっと、「仲のいい友だちひとりかふたりと食事や映画に行くほうが楽しめるのに」と思っていたものです。けれど、〝変わった子〟と思われないようにするためには、我慢するしかありませんでした。

当時のわたしには、数は少ないけれどとても親しい友人や仲間がいました。誰が人気者で、誰がそうじゃない、みたいなことはどうでもよかったし、「人気のある子」=「イケてる子」なんて思ったりもしませんでした。小人数でじっくりおしゃべりするのが好きだったおかげで、相互の信頼や、一緒にいて楽しいという気持ちや、愛情といった土台の上に、友情を築くことができました。

友だちはみんな、派閥とか人気競争みたいなものにはほとんど関心がありませんでした。そしてわたしのことを、「洞察力のある質問ができる」とか、「自分の力でものごとを考えられる」とか、「緊急事態にも落ち着いていられる」などと言って褒めてくれたものです。

「ものごとをじっくり考え、人の話をよく聞くのがあなたの長所だ」とも言ってくれました。みんなもわたしの話をよく聞いてくれました。わたしが口を開くのはちゃんと考えた上で意見を言いたいときだと、理解してくれていたのです。

時がたつにつれて、わかってきました。わたしの物静かなふるまいは、大きな力を秘めていたのだと。それをうまく活かすことさえできれば、便利な道具になってくれるのだと。世界を見まわせば、アップル・コンピューターから『キャット・イン・ザ・ハット』〔スース博士による有名な絵本〕に至る、数多くの会社や作品や商品が、内向型の人々によって生み出されてきたことがわかります。〝おとなしいのに〟ではなく、〝おとなしいからこそ〟、彼らは成功したのです。

いまのわたしは、内向型人間の代表として、世界中の人たちに向けてカメラの前で話をすることもあるし、何千人もの聴衆の前でスピーチをすることもあります。TEDで行ったわたしのスピーチ映像は、トップクラスの視聴者数を記録しました。何百万もの人たちが見てくれたのです〔TEDはニューヨークに本部がある会社で、さまざまな分野の人々による講演会を催し、そのようすをオンラインで公開している〕。

内向型人間から外向型人間に変わったのですか、と聞かれることもよくあります。人前で平気で話をしたり、コメンテーターとしてマスコミに顔を出したりしているからでしょう。しかし、わたしの基本的な性格は昔となにも変わっていません。いまでも、人前に出るのが恥ずかしいと思ってしまうことがときどきあります。それにわたしは、静かで思慮深い自分の性格が気に入っています。静かな人間ならではの能力がある、とも自負しています。内向型の人はみんな、きっとそうなれるはずなのです。

世界の三分の一が内向型人間

わたしのようなタイプの人間を表す、心理学的な用語があります。〝内向型〟です。その言葉はひとことで定義づけられるものではありません。内向型は、他人と一緒にいる時間を楽しむ一方で、自分ひとりで過ごす時間も大切にしています。人付き合いがとてもうまくできることもあるけれど、自分だけの世界にこもることもあります。観察力があって、自分が話をするより人の話を聞くことが多く、心の奥深く秘めたものを持っていて、そのことを大切にしています。

自分の中にこもっているように見えるのが内向型だとすれば、外向型はその逆だと言えます。外向型は、集団の中で能力を発揮できるし、他人と一緒にいることで力を得ることができます。

あなた自身が内向型ではないとしても、たぶん、家族や友だちの中には、内向型が何人かはいるでしょう。世の中の人々の三分の一は内向型なのです。つまり、知り合いの三人にひとりは内向型ということ。

〝あの人は内向型だ〟とすぐにわかることもあります。ひとりソファに座って本を読んだりiPadを見たりして、まわりの人と交流しない人。にぎやかなパーティーに参加しても、何人かの友だちとおしゃべりするだけで、ダンスフロアに出ていこうとしない人。教室では、先生が誰かの意見を求めているとき、目を合わせようとしない人。内向型は、発言するよりは、黙って流れを見守るほうが好きです。発言すべきときがあれば、そのときだけ発言します。

また、自分が内向型であることを隠すのがうまい人もいます。教室やカフェテリアにいるとき、大きな声でしゃべっていれば、内心では一刻も早くここを抜けだしてひとりきりになりたいと思っていることなんて、誰にもわかりません。実際、俳優や政治家や起業家や運動選手といった、外向型に見えるたくさんの人たちが、「わたしも内向型です」と告白してくれました。

【内向型のための10の声明】
①おとなしい性格は、じつはすばらしい長所です。
②考えごとばかりしているって? その人は「思索家」なのです。
③偉大な思索の多くは、孤独から生まれます。
④内向型の能力はゴムひものように大きく伸びるもの。外向型にできて内向型にできないことはありません。スポットライトの中に出ていくことだってできます。そのあとに静かな時間が少しあれば大丈夫。
⑤ときにはちょっと無理をしなければならないことがあっても、そのあと、本来の姿に戻ればいいのです。
⑥親しい友だちが二、三人いれば、ただの知り合いが百人いるよりずっといいはず(知り合いも大切な存在ですが)。
⑦内向型と外向型は陰と陽。お互い、なくてはならない存在です。
⑧世間話が苦手なら、黙っていても大丈夫。
⑨人々を導くのに、チアリーダーになる必要はありません。
⑩マハトマ・ガンディがお手本です。ガンディの言葉です。「穏やかな方法で、世界を揺るがすことはできる」

 (※この連載は、毎週木曜日・全8回掲載予定です。次回は3月15日掲載予定です。)

更新日:2018/3/8

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プロフィール

スーザン・ケイン

プリンストン大学、ハーバード・ロースクールを卒業。<静かな革命>の創設者のひとり。著作の『Quiet』(邦訳『内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力』、古草秀子訳、講談社)は、世界40の言語に翻訳され、『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラーになる。出演したTEDの動画の視聴回数は1800万回を超える。「思慮深いリーダーシップ」で、ハーバード・ロースクールのCelebration Award を受賞。『Inc.』誌により、「世界のリーダーおよびマネジメント専門家50人」に選ばれた。現在、夫とふたりの息子とともに、ハドソンリバーバレーに在住。

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グレゴリー・モーン

作家。ビル・ナイとの共著により、『Jack and the Geniuses 』シリーズをはじめとする子ども向け読み物を多数発表している。

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エリカ・モローズ

『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラーとなった多くの子ども向け読み物の出版に、執筆協力者または共著者として関わっている。作家のほかに、助産師、陶芸家の顔も持つ。ニューヨーク在住。

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【訳】西田 佳子 (にしだ よしこ)

名古屋市生まれ。東京外国語大学英米語学科卒業。英米文学翻訳家。訳書に〈警視キンケイド〉シリーズ(講談社)、『赤毛のアン』『小公子セドリック』『すごいね! みんなの通学路』(いずれも西村書店)、『ホートン・ミア館の怖い話』(理論社)、『テラプト先生がいるから』(静山社)、『わたしはマララ』(学研/共訳:金原瑞人)、『僕には世界がふたつある』(集英社/共訳:金原瑞人)などがある。

作品紹介

静かな力

内向型の人が自分らしく生きるための本

プリント全米ミリオンセラー『Quiet(内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力)』のスーザン・ケインによる同テーマの最新刊。
定価:1,400円+税/学研プラス

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