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第5回 相手に理解してもらうための伝えかた

生来の性質や、自分が関心のあることを追究するのは大切ですが、そのほかにも、自分の感情や行動の理由をきちんと説明するのも、とても大切なことです。

こんな経験はありませんか? 学校の廊下を歩いていて、考えごとをしていて頭がいっぱいだったり、周囲があまりにもうるさくてなにも考えられないくらいだったりするとき、友だちやクラスメートとすれ違います。一瞬相手の顔を見たものの、頭がいっぱいなので、挨拶もしないで通りすぎたところ、無視しようとか意地悪しようというつもりではなかったのに、相手からは、なにか怒っているのかと思われてしまいました。

こんなふうに相手に誤解されてしまいそうなときこそ、内向型の気持ちを説明するチャンスです。外向型の人たちは、すれ違ったときのあなたが考えごとで頭がいっぱいだったとか、周囲の騒音でまいっていたとか、そんなふうには思いもしないものです。そこをきちんと説明するかどうかで大きな違いが生まれます。

ただし、説明しようとしても、必ずしもみんなにわかってもらえるとは限りません。ニューハンプシャー州のロビーは、内向型という言葉をはじめて知ったとき、ほっとしたと言います。ロビーは大人数の中にいると無口になってしまう傾向がありました。仲のいい友だちだけでしゃべったり冗談を言ったりするのは好きなのに、大人数はだめなのです。

「二時間くらいたつと、『ああ、もうだめだ』と思ってしまう。ガス欠状態でね。そうなると自分のまわりに壁ができていって、誰とも話したくなくなる。体じゃなくて、心がへとへとに疲れてしまうんだ」

ロビーは、内向型と外向型の違いを、外向型の友だちに説明しようとしましたが、わかってもらえなかったそうです。その友だちはにぎやかで人の多い場所が好きで、ロビーがすぐにひとりになりたがる理由が理解できなかったのです。

ところが、ロビーの別の友だちのドルーは、すぐにわかってくれました。ドルーは両向型だったのです。外向型の妹と内向型の両親のちょうど中間という感じ。内向型の特性についてロビーから聞けば聞くほど、自分には内向性と外向性の両方があると
いうことをまわりの人にわかってもらいたくなりました。

映画制作を趣味にしているドルーは、新しいアニメーションの手法を試みているところでした。そこで、内向性についていろいろ研究した上で、そのことをアニメーションで説明するメッセージ動画を作り、それをユーチューブに投稿しました。

それは最初の一歩に過ぎませんでした。ドルーは高校で流されるニュース番組の制作者でもあったのです。週に一度のペースで新しい番組を作り、それを高校の全生徒が見ることになります。その番組の中に、ドルーは内向性についての動画を組みこみました。

驚くほどの反応がありました。感謝の気持ちを伝えてきた先生もいました。その先生は、じつは内向型であることを自覚して、それを隠していたとのこと。「全校のみんなに理解を求めることができた」とドルーは言います。

「それから何週間ものあいだ、いろんな人がぼくのところにやってきては、『あの動画は最高だったよ!』と言ってくれたんだ」

誰よりも喜んだのは、友だちのロビーでした。

内向型、外向型、それぞれの生徒にどんな能力があってなにが足りないかをより深く理解すれば、どの学校も、もっとうまくいくはずです。中学や高校というのは、内向型の人がもっとも苦労する時期です。何百人もの生徒たちが一ヶ所に集まったところで、他人から評価されたい、友だちを作りたい、と思ったら、快活にふるまって存在をアピールするしかないと考えてしまいがちだからです。

しかし、人の長所とされるべきなのはそれだけではありません。なにかをじっくり考えたり、なにかに集中して取り組んだりする力。他人の話を根気よく優しく聞く力。
これらふたつは、内向型の持つ〝スーパーパワー〟。大切にしましょう。好きなことを見つけたら、全力で取り組みましょう。そうすれば、中高生時代を無事に切り抜けられるばかりでなく、より充実したすばらしい日々を送ることができるのです。

 (※この連載は、毎週木曜日・全8回掲載予定です。次回は4月12日掲載予定です。)

更新日:2018/4/5

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プロフィール

スーザン・ケイン

プリンストン大学、ハーバード・ロースクールを卒業。<静かな革命>の創設者のひとり。著作の『Quiet』(邦訳『内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力』、古草秀子訳、講談社)は、世界40の言語に翻訳され、『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラーになる。出演したTEDの動画の視聴回数は1800万回を超える。「思慮深いリーダーシップ」で、ハーバード・ロースクールのCelebration Award を受賞。『Inc.』誌により、「世界のリーダーおよびマネジメント専門家50人」に選ばれた。現在、夫とふたりの息子とともに、ハドソンリバーバレーに在住。

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グレゴリー・モーン

作家。ビル・ナイとの共著により、『Jack and the Geniuses 』シリーズをはじめとする子ども向け読み物を多数発表している。

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エリカ・モローズ

『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラーとなった多くの子ども向け読み物の出版に、執筆協力者または共著者として関わっている。作家のほかに、助産師、陶芸家の顔も持つ。ニューヨーク在住。

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【訳】西田 佳子 (にしだ よしこ)

名古屋市生まれ。東京外国語大学英米語学科卒業。英米文学翻訳家。訳書に〈警視キンケイド〉シリーズ(講談社)、『赤毛のアン』『小公子セドリック』『すごいね! みんなの通学路』(いずれも西村書店)、『ホートン・ミア館の怖い話』(理論社)、『テラプト先生がいるから』(静山社)、『わたしはマララ』(学研/共訳:金原瑞人)、『僕には世界がふたつある』(集英社/共訳:金原瑞人)などがある。

作品紹介

静かな力

内向型の人が自分らしく生きるための本

プリント全米ミリオンセラー『Quiet(内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力)』のスーザン・ケインによる同テーマの最新刊。
定価:1,400円+税/学研プラス

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