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遠い先のことより
目先のことを考える

「老後が不安だ」という声をよく聞きますが、いま、いちばん、老後を心配しているのは、30代後半から40代ぐらいの世代。日本の財政にかげりが出てきているので、この世代が老齢になるころには、いまの高齢者のような社会福祉は受けられなくなる。老後はどうしよう! というわけです。
 不安材料を数え上げていくと、たしかに、日本の将来はかなり危ういと言わざるを得ません。でも、10年、20年先を思い悩んでもどうしようもありません。気持ちは重く沈んでいくだけではありませんか。
 ゴールが遠いとわからないことが多く、老後が大変だと言われれば不安だけれど、でも、実際はどうなるか、わからない。これが本当のところでしょう。
 考えてもわからないことは考えない。これも一つの不安対策です。
 はっきりと見えている、明日、明後日ぐらいまでのことはしっかり考えて、できることはちゃんとやる。でも、その先は……きっと、なるようにしかならないだろう。
 だから、心配しない。心配しなければ、不安もありません。
 人生は、一日一日の積み重ねです。今日一日をがんばろうと生きていく。実際にできること、そしてやっていることは、こうした日々の営みです。
 先がどうなるかは、だれにもわかりません。30年、40年先のことなど、もっとわかりません。生きているかどうかだってわかりません。
 キリマンジャロに登った経験のある人から聞いた話です。頂上制覇を成功させるコツは、できるだけ先を見ないことだそうです。と言っても、頂上は霧に隠れてなかなか見えないそうですが、途中、ふーっと霧が晴れ、雲海の中に頂上がそびえ立っているのが見える、そんなポイントがあるそうです。
 それを見て、大いに勇気づけられる、ということはあまりなく、むしろ、「ああ、あんな高いところまで登らなければならないのか」とがっくりしてしまう。これが本当のところだと言うのです。
 ひたすら一歩一歩登っていき、ときどき立ち止まって、ふっと下を見る。すると、こんなに高いところまで登ってきたんだと実感でき、それに力を得て、再び一歩一歩登っていく。頂上まで登るコツはそれしかないのだそうです。
 目標を立てることは大事です。でも、目標はしょせん目標。目標通りになることなど、めったにありません。
 いま30~40代の人の老後なんて、30年も40年も先のことです。その途中で何が起こるかわからないし、いま、想像しているのとは、まったく違う人生を歩むようになるかもしれないのです。
 私も大学を卒業したころは、現在のような立場になっていることなど、想像さえできませんでした。医師のほかに、本を書いたり講演をしたり、テレビに出演したり。マルチに生きられるようになったのは、最初から遠い目標を立てたからではなく、毎日、やりたいことややれること、与えられたチャンスを一つひとつこなしてきた結果です。
 逆に言えば、一日一日、少しずつ方向を変えていけば、30年前の想像をはるかに超えるような大転換を実現することだって、できるということです。

更新日:2016/2/16

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プロフィール

和田 秀樹 (わだ ひでき)

1960年大阪府生まれ。精神科医・教育評論家。東京大学医学部卒。国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。精神分析学(特に自己心理学)、集団精神療法学等を専門とする。受験アドバイザーとしても精力的に活動し、志望校別勉強法の通信教育・緑鐵受験指導ゼミナールを主宰。東京大学をはじめとする難関大学に挑戦する受験生を指導している。映画初監督作品『受験のシンデレラ』がモナコ国際映画祭最優秀作品賞を受賞するなど、文化面でも幅広く活躍中。

作品紹介

仕事・お金・人間関係 「あ~、困った!」と思ったら読む本

wada_cover201602精神科医として多くの悩みに向き合ってきた和田秀樹先生が、困ったときでも心穏やか解決に向かうための「心のコツ」を教えます。
¥1,200(税抜)/学研プラス


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