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いい記憶を「上書き」する

 心にイヤな感情が生まれるきっかけは、あきれるくらいちょっとしたことからです。
「あの一言が妙に心に刺さった」とか「取引先の課長、今日はなんだか渋い表情だった。何か気にさわるような態度を取ってしまっただろうか」。
 この程度のことでも、そのまま心に留めておくと不安のタネになってしまいます。
 別に、気にしつづけたからといって、謝ってもらうこともできないし、取引先の課長がなぜ、渋い顔をしていたのか、その理由を問いただすこともできない相談でしょう。
 だったら、忘れてしまうのがいちばん。忘れてしまえば、なかったことと同じ。御破算で願いまして、とゼロにできるのです。
「忘れる」というのは、なかなかうまい手だと思いませんか?
 これまでの日本の教育は、記憶することに重点が置かれていたこともあって、「記憶力が高いことはいいことだ」という、信仰に近い思い込みがあります。
 でも、「忘れる力」、忘却力もなかなか捨てがたいものがあるのです。
 以前は、「忘れる」ことは脳のエラーだという考え方が主流でしたが、現在では、「新しいことをどんどん記憶していくから、これまで覚えたことに上書きされて忘れることができる」というメカニズムが想定されるようになりました。
 日々、時々刻々と新たなことに出合い、新たな体験を積み重ねていく。そのすべてを記憶しておこうとしても、脳にもキャパシティの限界があります。だから、どんどん忘れて、新しい記憶が上書きされていくわけです。
 感情を結びつける役目があり、感情が揺さぶられたときほど重要な記憶だと判断されてしまうから、だと考えられています。
 忘れたいことほど忘れにくいなんて、脳は皮肉な構造になっているものですね。
 では、どうすればいいのか? 
 答えは先ほどの「上書き」です。
 イヤな記憶に、新しい記憶を「上書き」する。イヤな記憶を塗り替えてしまえば、結果としてイヤな記憶が浮上することが難しくなるのです。
 たとえば、映画館に飛び込んでみる。暗い空間で流される映像や音楽は五感を丸ごと取り込んで、別の世界に連れていってくれますから、イヤなこともきれいに忘れてしまいます。
 ボーリングのように、体を動かすゲームも効果的です。ストライクなら文句なし。残ったピンがむずかしい位置で、それをみごとスペアにしたときなども爽快な快感があり、1ゲーム投げたくらいでもイヤな記憶は吹き飛んでしまうでしょう。
 こんな風にいろいろトライして、イヤな記憶が浮かばないようにする。心のコントロールにはかなり大事なことだと考えてください。
 新しい記憶は、できるだけ楽しく、いい感情になれるものがいいですね。

更新日:2016/3/15

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プロフィール

和田 秀樹 (わだ ひでき)

1960年大阪府生まれ。精神科医・教育評論家。東京大学医学部卒。国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。精神分析学(特に自己心理学)、集団精神療法学等を専門とする。受験アドバイザーとしても精力的に活動し、志望校別勉強法の通信教育・緑鐵受験指導ゼミナールを主宰。東京大学をはじめとする難関大学に挑戦する受験生を指導している。映画初監督作品『受験のシンデレラ』がモナコ国際映画祭最優秀作品賞を受賞するなど、文化面でも幅広く活躍中。

作品紹介

仕事・お金・人間関係 「あ~、困った!」と思ったら読む本

wada_cover201602精神科医として多くの悩みに向き合ってきた和田秀樹先生が、困ったときでも心穏やか解決に向かうための「心のコツ」を教えます。
¥1,200(税抜)/学研プラス


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